推奨馬
・スカイラー(牝)
∟父:Saxon Warrior(サクソンウォリアー)
∟母:トレジャリング
∟生産:ノーザンファーム
∟厩舎:国枝栄厩舎
∟馬主:ムサシノターフ
本日はSaxon Warrior(サクソンウォリアー)産駒、スカイラー(トレジャリングの2020)の紹介です。スカイラー(トレジャリングの2020)は2021年セレクトセール1歳馬セッションにて9000万円で落札された馬です。ノーザンファーム生産馬で国枝厩舎の牝馬ですので字面だけで期待が高まります。
Saxon Warrior(サクソンウォリアー)産駒の紹介は以下ダズリングブレイヴ(リリーズキャンドルの2020)に続き2頭目です。
Saxon Warrior産駒の特徴といえば母方にGalileo(ガリレオ)の配合があることです。あとで述べますがスカイラー(トレジャリングの2020)は父母間でGalileoのクロスが成立している珍しい馬です。色々調べたものの魅力と懸念点が入り混じる馬であるというのが現時点での結論であります。それでは1つずつ紐解いていきます。
母トレジャリングについて
トレジャリングですがイギリスの牝馬で重賞戦線でも活躍している馬です。
日本への輸入歴など確認しましたがわかりませんでした。主な戦歴は以下の通りです。
ここで実際のレースを見ていきましょう。米国で行われた2018年のセニョリータステークス(GⅢ)の映像です。
これは凄いですね。第2コーナーあたりから先頭に立ち最後まで先頭で突き抜けます。最後の直線の伸びも良いです。何よりも良い点としては先ほども記載した第2コーナーからの動きです。騎手が促すのではなく馬自ら前に突き進んでいきます。且つ無理に行っているのではなくちゃんと馬自身で制御出来ているような走りである部分非常に好感が持てます。セニョリータステークス(GⅢ)は芝1600mのレースですので今回紹介するスカイラー(トレジャリングの2020)についても同様の力が受け継がれている事が期待できると考えます。
馬体
スカイラー(トレジャリングの2020)の1歳時馬体
スカイラー(トレジャリングの2020)の1歳時の馬体です。首の長さが若干短めに感じるところはありますが、全体的にボリュームがあります。良い部分としてはまず胴の長さです。最低でもマイル、2000m程度でも対応出来そうな馬体に成長してきそうな雰囲気です。また腹回りのボリュームも良いです。更にはトモです。筋肉の線も見え母トレジャリングのような前方への推進力を生み出せることが期待出来る見た目であります。
Saxon Warrior産駒ではこのダズリングブレイヴ(リリーズキャンドルの2020)しか比較のしようがありませんが、スカイラー(トレジャリングの2020)の方ががっちりした印象です。
では実際の動画を見ていきましょう。セレクトセール1歳馬セッションの様子です。3時間58分あたりから開始します。
この動画が最もスカイラー(トレジャリングの2020)の魅力を引き出しているものかもしれません。まず見た目が美しいです。毛艶が良く光っています。また筋肉の張りも素晴らしくバネの塊という印象。全体を通してとにかく落ち着いていますね。気性面も問題ないと考えます。実際のレースでも折り合いをつけて進めることが出来そうであります。
血統
スカイラー(トレジャリングの2020)の血統表
∟父母間クロス:Galileo3×4、デインヒル4×5、Indian Ridge5×5
スカイラー(トレジャリングの2020)の最大の魅力及び懸念点はこの血統にあります。それぞれ記載していきます。解説にあたっては、母トレジャリングの父Havana Goldと母You Look So Goodを確認し7代目まで遡ります。
母父Havana Gold、母母You Look So Goodの血統表
それぞれ並べます。
◾️母父:Havana Goldの血統表
◾️母母:You Look So Goodの血統表
5代目血統表では表せない6代目、7代目の血統表がこの紫枠で囲っている部分です。青枠で記載しているような各種要素を兼ね備えており、非常に魅力的です。スライリー(トレジャリングの2020)の魅力はまさにこの6代目、7代目血統部分にあります。
【推奨点①】ディープインパクト産駒に有効な血統配合
とにかく6代目、7代目血統部分の構成としてディープインパクト産駒での成功例のある血統配合が隠されているのであります。
・Danzig
・Mr. Prospector
・Nureyev(ヌレイエフ)
・Hail to Reason
これだけの血統が詰まっているのは珍しいと思います。またCaroの配合があります。トニービンと同じGrey Sovereign(グレイソブリン)の配合があります。
他にはKrisもあります。これはディープインパクト産駒とは関連性はありませんが一度エピファネイア産駒の語る際に取り上げた血統です。
ディープインパクトの血を開花させるにあたっての必要条件は整っております。
【推奨点②】父母間Lyphard(リファール)クロスがあること
スライリー(トレジャリングの2020)の母母のYou Look So Goodの血統表を見ていただくと分かりますがLyphard(リファール)の配合が2本もあります。これは凄いです。つまり構成は父母間でLyphard5×7×7という事です。
以前以下記事で書きましたが日本競馬界において父母間Lyphardクロス成立馬はPOG期間において成功例が多数あります。
父母間Lyphardクロスはあくまで「各種推奨要素の後押し」であるとこの記事で説明しておりますが、前項6代目+7代目血統での血統構成、馬体、厩舎等推奨点がありますのでこの父母間Lyphardクロス構成が有効性を発揮してくれるものと思っております。
それにしても他に例を見ないLyphardが2本入っている部分、これがどうでるのかここは未知の領域であります。
【懸念点】母父父Teofilo配合の不振
スカイラー(トレジャリングの2020)の母父父部分にTeofilo(テオフィロ)というものがあります。アイルランドの競走馬で2006年最優秀2歳牡馬に選出された馬のようです。
ただこれが日本競馬界でなかなか走りません。正確にはPOG期間成功例が少ないということです。
Teofiloの子の成功例としてはテリトーリアルが2021年小倉大賞典を勝ちました。
POG期間で一番活躍したTeofilo産駒といえばリッチーリッチーでしょう。重賞勝ちなどはなかったものの山吹賞2着、ゆきやなぎ賞3着、デイリー杯2歳ステークス(GⅢ)5着、葉牡丹賞3着と健闘しています。
また母父配合としては、スパイラルノヴァ(父キズナ×母父Teofilo)という馬がおりアイビーステークス3着、エリカ賞3着とこちらも健闘。ディープインパクトの子との良い例があるのは非常に心強い所であります。
ただあまりに成功例が少なく他の馬は全てダメです。他の推奨要素がこういったことを打破してくれるものと思っています。
あとは最初に述べた父母間Galileoクロス。これは懸念とも何とも言えない所です。一般的には「欧州向き、日本適正無し」のような印象を受けますが、「ディープインパクトの子供」という観点でいくと母にGalileo配合のあるPOG期間成功例としてはバスラットレオンが最も良い例でしょう。
とはいえ、これも父はキズナであるため父母間Galileoクロスはありません。父母間Galileoクロスの有効性については結論が出せないというのが正直な所であります。
そういった意味でもスカイラー(トレジャリングの2020)は非常に挑戦的な血統配合です。新たな血統構成における日本競馬界での成功に期待します。
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