はじめに
今回はキズナ産駒の選び方についてまとめます。あくまでもPOG期間における考えをまとめるものでありますが、一口馬主におけるキズナ産駒選定にも利用出来ると考えます。種牡馬解説は以下「ドゥラメンテ産駒の選び方」「ロードカナロア産駒の選び方」に続き第3弾であります。
POGまくれーんとしてはキズナ産駒の解説を行うのは2回目なのです。以前一度記事作成しておりましたが完成度が低く今回改めてまとめ直しました。
POG対象馬としてのキズナ産駒の印象としては「よく分からない」「非ノーザンファーム生産馬から活躍馬が出ており選び辛い」「ただ何だかんだでPOG期間中に活躍していることがある」など恐らくはよく分からず、そもそも皆様のPOG馬選定における優先順位としては決して高くないことから、結果盲点となっている種牡馬なのではと思っております。
キズナは種牡馬として社台スタリオンステーションに入っておりますがノーザンファーム生産馬となっている馬はあまり多くありません。
皆様がPOG馬を選定する際、何か底上げをする種牡馬、またPOGドラフトの競合が少ない種牡馬、あえて非ノーザンファーム馬での選定を行う場合はキズナ産駒を考えるのは一つの手と考えます。
キズナについて
キズナは第80回、東京優駿(G1)を勝った馬です。Youtubeでも映像が配信されておりますが、あの東京優駿(G1)の地割れしそうな大歓声の中、東京競馬場のスタンド前を大外一気で駆け抜ける姿は今でも鳥肌が立ちます。また名前もキズナ(絆)ということで東日本大震災復興を願った名前、且つ鞍上武豊騎手と出来すぎなくらいの運命的な勝利であったことで感動すら呼び起こさせるものでありました。中野雷太さんの実況もまさに競馬史の歴史に名を刻む「キズナだ」の連呼は何度聞いても飽きぬものであります。
キズナはディープインパクト産駒でノースヒルズ生産馬です。当時POG馬としての注目度が如何程だったかは確認が出来ませんでした。
キズナの主戦騎手はデビュー当初佐藤哲三騎手でした。新馬戦、次走黄菊賞と連勝しましたが、この勝利の二週間後、佐藤哲三騎手が引退する起因となった落馬事故が起こり、3戦目以降は武豊騎手となった経緯があります。
キズナの凄い所としては、東京優駿(G1)勝利馬としては異例のローテーションでの参戦だったという事だと思っています。弥生賞(GⅡ)5着と大敗→毎日杯(GⅢ)1着。その後皐月賞(G1)には向かわず京都新聞杯(GⅡ)1着。その後東京優駿(G1)へと繋がります。現在ではロジャーバローズやシャフリヤールがそれと同じようなローテーションで東京優駿(G1)を勝っておりますが、その先駆け的存在であると捉えております。
キズナ産駒のPOG期間活躍馬一覧
POGまくれーん独自の基準ではありますが2022年5月までにPOG期間で活躍したキズナ産駒の活躍馬をまとめます。
キズナ産駒の初登場は2017年産駒(デビューは2019年)ですのでまだ開始間もないものです。
こう見るとキズナ産駒は毎年POG期間で重賞勝利馬を輩出しております。ここに挙げている馬はフラーズダルム以外は全てPOG期間で2勝以上を上げています。唯一例外のフラーズダルムも新潟2歳ステークス(GⅢ)3着の成績を誇ります。
この中でノーザンファーム生産馬は16頭中4頭。少ないです。その他ノースヒルズが3頭、社台ファーム、社台コーポレーション白老ファームまではわかりますが、それ以外はなかなか見ないラインナップです。それでもここまでのデータで以下の事が言えます。
キズナ産駒は生産牧場のこだわりは持つ必要はない。ただし所属する厩舎においてはPOG期間に活躍する主力厩舎であるべきである
これは当たり前かもしれませんが、特にキズナ産駒については、「生産牧場」↔︎「厩舎」の優先順位を考える上では圧倒的に「厩舎」を優先して考えるべき種牡馬であるという事です。特にPOG期間G1勝利経験のある木村哲也厩舎、手塚貴久厩舎、藤原英昭厩舎などに所属予定となっているキズナ産駒は今後も注目しておいたほうが良いと考えます。
キズナ産駒の馬体
キズナ産駒の馬体について確認してきましょう。基本的には1歳時の馬体を見ていきたいと思いますが中には2歳時のものも含まれます。
◾️ディープボンド(1歳)
◾️バスラットレオン(1歳時)
◾️ルリアン(1歳時)
◾️ソングライン(1歳時)
◾️アスクワイルドモア(2歳時)
◾️ケヴィン(2歳時)
◾️ステラリア(1歳時)
◾️フラーズダルム(1歳時)
以上8頭のキズナ産駒活躍馬の馬体を紹介しました。
これらのキズナ産駒POG期間活躍馬に共通して言えることは、腹回りのボリュームがかなりあることです。キズナ産駒はこれが故に背中のラインと腹回りのラインが並行になることはありません。
特にソングライン、ステラリア、ディープボンドは極端に腹のボリュームがあります。キズナ産駒を見るにあたり腹回りのボリュームがあることを確認するべきでしょう。
キズナ自体はディープインパクト産駒なのですが、キズナ産駒はあまり馬体の全体的なバランスが綺麗ではありません。
バランスの美しさというのは例えば以下ディープインパクト産駒(シュヴァリエローズ:2歳時)のようなものを指します。
それがキズナ産駒にはありません。ただし腹回りの大きさによりそのバランスが崩れているだけで、トモの迫力は1歳時からかなりの大きさになっていることは重要なようです。いい意味でこの腹回りとトモのアンバランスなまでのボリュームがキズナ産駒成功の秘訣なのかもしれません。
◾️キズナ産駒馬体成功条件
①腹回りのボリュームは極端に大きい方が良い
②トモのボリュームも極端に大きい方が良い
③「①」「②」の大きさが故に全体のバランスが悪く見えるがむしろそうあるべきである
キズナ産駒の血統成功条件
キズナ産駒について前項までに紹介した馬を元に、キズナ産駒における血統構成の成功条件をまとめていきます。
先ほど述べた馬体とともにこの血統構成を見出すことも相当重要な事項であると考えます。それではまずキズナ産駒活躍馬の血統表を並べていくこととしましょう。
キズナ産駒活躍馬の血統表
◾️ディープボンド
∟父母間クロス:Halo4×4、Lyphard5×4、Northen Dancer5×5
◾️アスクワイルドモア
∟父母間クロス:Halo4×4(サンデーサイレンス3×3)、Lyphard5×5
◾️ソングライン
∟父母間クロス:Halo4×5(サンデーサイレンス3×4)、Hail to Reason5×5
◾️マルターズディオサ
∟父母間クロス:Northen Dancer5×5×5、Secretariat5×5
◾️クリスティ
∟父母間クロス:Halo4×5(サンデーサイレンス3×4)
◾️ファインルージュ
∟父母間クロス:Halo4×5(サンデーサイレンス3×4)、Northen Dancer5×5
◾️ビアンフェ
∟父母間クロス:Northen Dancer5×5
◾️アブレイズ
∟父母間クロス:Halo4×5、Northen Dancer5×5
◾️バスラットレオン
∟父母間クロス:Northen Dancer5×5
◾️クリスタルブラック
∟父母間クロス:Halo4×4、Hail to Reason5×5×5
◾️ルリアン
∟父母間クロス:Northen Dancer5×5×4
◾️ハギノピリナ
∟父母間クロス:Halo4×5(サンデーサイレンス3×4)
◾️ステラリア
∟父母間クロス:Storm Bird4×4、Northen Dancer5×5×5
◾️ケヴィン
∟父母間クロス:Northen Dancer5×5
◾️フラーズダルム
∟父母間クロス:Lyphard5×4、Northen Dancer5×5
キズナ産駒活躍馬の血統配合まとめ
前項で並べた血統表での重要な要素をまとめると以下の通りとなります。
◾️キズナ産駒成功馬推奨配合
1:父母間Haloクロスがある
2:父母間でNorthen Dancerクロスがある
3:父母間でLyphardクロスがある
4:「1」とは別の路線で父母間でHail to Reasonクロスがある
5:母馬にMr. Prospector(Raise a Native)配合がある
6:母馬にSadler’s Wells(Nureyev)配合がある
7:母馬にNijinsky配合がある
8:母馬にDeputy Minister配合がある
9:母馬にBlushing Groom配合がある
10:母馬にDanzig配合がある
11:母馬にMonsun配合がある
12:母馬にMontjeu配合がある
13:母馬にSeattle Slew配合がある
14:母馬にGrey Sovereign系配合がある(トニービン/Caro等)
まだ抽出すれば他にもありますが重要なのはこの通りの内容。それではどれくらいの該当状況なのか以下表にまとめます。
あくまで5代目血統表内の該当数です。6代目以降にまで手を広げるともう少し該当数が伸びますが、一旦ここまでとします。
表を見ていただくと分かりますが、重要なのはその該当数です。最低3個は必要。3個で該当しているPOG期間重賞勝利経験馬はバスラットレオンとビアンフェの2頭。とはいえある条件を満たしています。それぞれ解説していきます。
【推奨条件①】キズナ産駒が成功するには父母間Haloクロス、Northen Dancerクロスのいずれかの配合が必須である
POG期間で活躍するキズナ産駒の血統配合を調べると、血統構成は「父母間Haloクロス」もしくは「父母間Northen Dancerクロス」のいずれかが必ず入っております。前項で紹介した15頭において全頭条件を満たしております。つまりこの条件を満たしていないキズナ産駒を選ぶのは危険であるということです。
ただ考え方としては、この血統構成「父母間Haloクロス」「父母間Northen Dancerクロス」はキズナ産駒成功への土台であり、これが成立していれば成功するというものではないでしょう。
【推奨条件②】父母間Haloクロス
キズナ産駒における成功条件として前項記載の通り、この父母間Haloクロスが必要であります。これを満たしている馬において、POG期間はおろか古馬になっても重賞戦線で活躍しておりますディープボンドがいます。
POGまくれーんとしては、キズナ産駒においての血統構成最重要事項がこの父母間Haloクロスだと考えます。
このHaloクロスですが3つ流れがあり、1つは母馬に配合されているサンデーサイレンスの血からの流れ。もう1つはDevil’s Bagの血からの流れ。もう1つはキングヘイローからの流れです。
このサンデーサイレンスの血ですがゼンノロブロイ、 アグネスタキオン、ダンスインザダーク、フジキセキと様々な配合からのものであり、どのサンデーサイレンス系種牡馬からの血が良いかという考えは不要なようです。
もう1つのDevil’s Bagはキズナ産駒の母方に配合があれば要注目です。クリスタルブラック、アブレイズがこれに該当。
また今回該当馬は1頭ですが母馬にキングヘイローが配合されていることにより父母間Haloクロス構成を成立させることとなったディープボンド。母馬にキングヘイロー配合は2022年皐月賞2着に入ったイクイノックスでも成功を収めており、キズナ産駒に配合馬がいないか確認が必要でしょう。
最後にこの項目の注意点を書きます。今回キズナ産駒成功条件といて父母間Haloクロスのことを書きましたが、Haloの1代遡りの「Hail to Reasonのクロスではダメなのか」という疑問が湧くと考えます。
答えはキズナ産駒の血統構成必須条件「父母間Haloクロス」また「父母間Northen Dancerクロス」このいずれかを満たしていない状態でただ単に父母間Hail to Reasonクロスだけが成立していてもダメということです。そのために血統構成推奨条件でも父母間Hail to Reasonクロスは別項目として書き出しております。この点の誤解は非常に危険と考えます。正しく認識頂き選定願います。
【推奨条件③】父母間Northen Dancerクロス
POGまくれーんとしてはこれまで複数の記事でキズナ産駒は父母間Haloクロスのことばかり述べておりましたが、これに該当しない馬の共通項を探っていたところ、この父母間Northen Dancerクロスの条件に気づきました。
該当馬の代表としてバスラットレオンがいます。
またチューリップ賞(GⅡ)を勝ったマルターズディオサもこれに該当します。
父母間Northen Dancerクロスの成立はそれが単独である場合も問題はありませんが、前項父母間Haloクロスと両立している時に最高に良い力を発揮すると考えます。この2条件を同時に満たしているのがディープボンドとファインルージュ。両立出来ている配合のキズナ産駒に遭遇した場合は重要視すべきであります。
話を父母間Northen Dancerクロスに戻します。キズナ産駒において母馬にHalo配合がなく父母間Northen Dancerクロスが成立している バスラットレオンとマルターズディオサに共通しているのがSadler’s WellsあるいはNureyevの配合が同時にあることです。これもただ単にNorthen Dancerクロスが成立していれば良いということではなく、Northen Dancerクロスが成立を土台として他の血統配合が補強していることが必要です。補強として有効なものはDanzig、Mr. Prospector、Blushing Groomです。
【推奨条件④】父母間Haloクロス、Northen Dancerクロスを補強する配合
ここまで述べた通り、キズナ産駒の成功における、血統配合必須条件として「父母間Haloクロス」また「父母間Northen Dancerクロス」このいずれかを満たしていることと述べましたが、これには補強が必要です。
その一つが父母間Lyphard(リファール)クロスです。父母間Lyphardクロスの威力は以下記事で説明しております。
キズナ産駒でも父母間Lyphardクロスの有効性が認められました。それがディープボンドと、2022年京都新聞杯(GⅡ)を勝利したアスクワイルドモアです。
キズナ産駒の 父母間Lyphardクロス馬は特注として考えた方が良いかと思います。
また繰り返しですが、キズナ産駒は血統配合必須条件として「父母間Haloクロス」また「父母間Northen Dancerクロス」このいずれかを満たしていることを前提として、先ほど述べた他要素が多く配合されていることが必要です。
Sadler’s Wells(Nureyev)、Deputy Minister、Blushing Groom、Danzig、Monsun、Montjeu、Seattle Slew、トニービン(Grey Sovereign系配合)などがいかに多く配合されているかが重要です。とにかく該当数の多いキズナ産駒を選びましょう。
以上です。
POGまくれーんの提唱するキズナ産駒の選定方法について、皆様の馬選定のお役に立てればと思っております。
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